Table of Contents
鎧滝
船形山
宮城・山形県境にある火山で、船形連峰の最高峰。標高1500メートル。山名は、宮城県側から見ると船底を伏せた形に似ていることに由来するという。山形県側では御所山 (ごしょさん) といい、山名は承久の乱(1221)後佐渡に流罪となった順徳上皇が逃れ住んだという伝説によるという。山頂に御所神社がある。山体はおもに輝石安山岩からなる。東側が欠けた火口壁のもっとも高い部分にあたり、東に下ると旧火口の湯谷地がある。上部はブナ帯であるが、1400メートル以上にはハイマツや高山植物が生育する。宮城、山形両県からいくつかの登山ルートがある。
"船形山", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-12-04)
未だ訪瀑できていない滝が東北に残っている。
今住んでいる仙台からもほど近い船形山の山麓に流れる「鎧滝」だ。
「鎧滝」はその鎧のような岩盤の見事さから東北の滝ヤによく知られている。
東北を代表する秘瀑の一つだ。
アプローチとしては山形側から船形山を登り、登山道から鬼口沢を下る。
鬼口沢から笹木沢に入り、遡行を続けると「鎧滝」だ。
難所としては鬼口沢の二度の懸垂下降と前衛滝を含めた鎧滝の登攀だろうか。
今年はよく沢にも入っていたので体の準備は出来ている。
あとは寒さとの闘いだ。
行程
ログ・YAMAP
鬼ノ口沢~笹木沢周回 / kuzumisawaさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
装備
ハードシェル・沢靴(ラバー)
水1.5L・行動食
ハーネス・ガチャ類・ロープ(30m1本 )
撮影装備一式
一泊装備
YOUTUBE
2022年10月8日 鎧滝 鬼ノ口沢~笹木沢①
08:17 観音寺登山口
今回のパーティーはポム氏との二人パーティー。
車で船形山観音寺登山口に到着した時には雨と風が強くなっていた。
寒すぎて気持ちが全く上がらない。正直こんな天気で沢に入りたくないとも思ったが、とりあえず入山してから考えようと準備を進める。
登山道を歩いているとさらに風が強くなってきた。やはり帰ればよかったと少し後悔。
船形山には船形山信仰と呼ばれる山岳信仰が根付いており、登山道脇には祠も見えた。
色麻町の小栗山に船形神社があり、「小栗山村安永風土記」によれば、もとは船形十二社権現社と称し、別当は高城村(現色麻町)の羽黒派鶏運寺で、境内に深山社など一二の小祠が祭置されていた。小栗山の船形神社は里宮にあたり、奥宮はそれより保野川をさかのぼって沢入り八キロにある端山で、船形山信仰の拠点の一つと思われる。現在も旧暦四月八日にはおやま参詣が続けられ、女人禁制・肉食禁忌が守られてきたが、昭和四二年(一九六七)に解かれた。当夜は里宮の薬師堂で夜籠が行われる。神体と伝える薬師仏は、奥宮南方のオクラ岩という巨岩の洞穴にあるというが、別当と神職以外に知る者はなく、それを探ることもタブーとされていた。その御開帳は四二年に一度あるが、前日の四月七日には村の男が夜籠をし、別当と神主だけで神迎えに行き、神体を「木舟」に移し、社殿に奉安する。また小栗山の村人は田植が終わると、総出で船形山参りを行うが、これをサツキマイリという。
"ふながたやま【船形山】宮城県:総論", 日本歴史地名大系, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-12-04)
10:27 下降ポイント
山頂手前まで歩き、下降点にあたりをつけて下ってゆく。
稜線に出ると風雨が強くなったが、宮城側は晴れ間も見えている。きっと大丈夫だろうと自分に思い込ませ進む。
沢型を下りと水が出てきた。鬼口沢だ。
今日はこの沢を下ってゆくだけなのだが、この沢、滅茶苦茶にヌメる!
秋だということもあるのだろうが嫌になるほどヌメる。
渓相も単調で鬼口沢の上部はまったく面白くなかった。
12:44 12m滝
行く先が切れ落ちている。12m滝の下降だ。
左岸からロープを垂らし無事着地。
下から見上げるとなかなかに立派な滝だった。
13:10 V字渓谷
さらに下ると鬼口沢の名所「V字スラブ」が現れた。
左岸が削られておりV字の様相を呈している。歩いていると解放感があり気持ちがいい。
青空も顔を出し気分も少し上がってきた。
入山時よりはマシになったとは言え、10月とは思えないくらい寒いのには変わらない。
絶対に沢に落ちないように慎重に進む。8月の暑い時期なら沢に飛び込みながら楽しく下れるだろう。
残念ながらこの日はまったく楽しむことは出来ず、ジリジリとした緊張感のみが沢を支配していた。
14:43 テン泊地
地形図を見ると想像以上に進んでいないことに気づき、うんざりした。
この日のうちに笹木沢に入っておきたいとも考えていたが、どうやらそれは無理のようだ。
上沼沢との出会いにおあつらえ向きのようにテン場があったので、本日はここまでとザックを降ろす。
いつものように薪を集め夜まで酒盛りだ。
焚火で体を暖めることが出来、やっと沢登りらしくなってきた。
この日は十三夜。空には栗名月が登っており、ヘッデンもいらないくらいだった。
十三夜
旧暦9月13日の夜のことで,豆名月,栗名月とも呼ばれる。八月十五夜と併せて,〈片月見はするものではない〉と伝えられている。長野県安曇郡その他で〈小麦の名月〉といって,この夜の天気によって,翌年の農作の豊凶を占う風がある。また福岡県の海岸部では,この日を〈女の名月〉と呼んで,女がいばってもよい日だと伝えている。この夜の神祭りが女性を中心に営まれたことを示す言い伝えであろう。
"十三夜", 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-12-04)
2022年10月9日 鎧滝 鬼ノ口沢~笹木沢②
05:15 起床
朝の冷えで起きてしまい、のろのろと朝飯の準備を始める。
残っていた薪で火を起こし、焚火に当たりながら朝飯をかっこむ。
今日は笹木沢の遡行、そして「鎧滝」との対面だ。
07:30 13m滝
二日目がスタート。鬼口沢の下部は上部よりヌメりが少なかったような気がする。
気温が高く、我々のテンションが高かったからそう感じただけかもしれないが。
渓相がゴーロからゴルジュに変わり、少し先にまた滝が出てきた。
13mの滝は落口左岸の立木から下降。これまた高度感のある懸垂だった。
下から見上げるとこんな滝。
流身の下をくぐれば登れそうな滝だ。
今日は寒すぎて絶対やらないが。
07:52 笹木沢入渓
滝を降りてしまえばすぐ笹木沢出会いだ。
遂に到着した。鬼口沢のヌメリに悪戦苦闘したからだろうか、距離以上に長く感じた。
笹木沢の水量はそれほど多くない。
笹木沢は小滝とナメが交互に続く歩いていて飽きない沢だった。
年間多くのパーティーが入るのも納得する。
滝も登れる滝がほとんどで、鬼口沢とは比べ物にならないくらい歩きやすい。
09:27 7m前衛滝
水路の先に滝が見えてきた。あれが鎧滝の前衛滝だ。
高さは7mほど。水流の右からでも左からでも登れるようだが、我々は右から。
カチホールドは豊富だが、かなりヌメるので注意が必要。
滝を登れば遂に鎧滝とご対面だ。
09:45 鎧滝
落差:30m
形状:分岐瀑
水系:大倉川水系
東北を代表する秘瀑の一つ、「鎧滝」。
落差は30mとそこまで大きくはないが、それ以上の威圧感を感じる。
名前の由来になった鎧のような岩盤が黒々と光っている。
この日のコンディションもあったとは思うが、滝前に立つとひどく恐ろしく感じた。
あまりの寒さに体が凍えそうになりながらの撮影。
滝前空間もそこまで広くなく、アングルも限られてくる。
撮影後、手持ちのアウターを全て着込み、鎧滝に取り付いた。
鎧滝の登攀は上部までは水流左から。
上部は壁が立っていて難しいので、左の灌木帯に逃げる。
モンキークライムで強引に落口まで。灌木帯に入るまでのトラバースは緊張感がある。
10:14 落口
鎧滝を越えるとあとは登れる小滝とゴーロがひたすら続く。
沢を詰めていくとブナ林が広がり、少々のヤブ漕ぎで登山道に出る。
昨日歩いた登山道だ。
12:00 登山道
鬼口沢から笹木沢の周回ルートはこれで終了。
あとは登山口に戻るだけだ。
山形側は天気が悪く今にも降りそうな空だ。
さっさと車に戻ろう。
12:52 観音寺登山口
無事下山。雨が降る前に戻って来れた。
一体どうなることかと思った山行だったが、なんだかんだ楽しく歩くことが出来た。
焚火も悪くなかったし、鎧滝も想像以上だった。
その名の通り鎧のような岩盤が特徴的な鎧滝。
また一つ恋焦がれていた滝と出会うことが出来た。
次に行くときは下部からの日帰りルートで行きたい。
2022年の沢登りはこれで一応終了だ。
今年も実りある一年になった。