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森吉山・九階の滝
滝巡りを始めた時にいつか訪瀑したいと思っていた滝が3本あった。
「百四丈滝」「二天の滝」、そして「九階の滝」。
日帰り訪瀑ではかなりの難度を誇るため、ずっと尻込みをしてしまっていました。
そんなモヤモヤの中、大蛇尾川でご一緒した「谷川さん」から「九階の滝、興味あります」と言っていただいたことで、私の重い腰も500gほど軽くなりました。
森吉山に流れる神様の沢とも呼ばれる「様ノ沢」、そして様の沢の大スラブに流れる「九階の滝」。
遂に挑戦する時が来てしまいました。
ヒトコト滝MEMO
様ノ沢のスラブに流れる全国的にも珍しい大スラブ滝だ。
落口から9段に流れ落ちていることからその名前が付けられたが、なんといっても最下段のスラブが特徴的。
滝へは隣の赤水沢からコルを越えて様ノ沢に降り立つルートがあるが、懸垂下降や登り返しの技術が必要なので一般的な訪瀑とは一つレベルが違う。
このエリアでは死亡事故も起こっているので入山には最新の注意を払ってほしい。
行程
- 8:55 野生鳥獣センター駐車場
- 9:47 赤水沢分岐
- 10:54 赤水沢枝沢へ
- 11:30 九階の滝・遠望
- 11:50 1回目の懸垂ポイント
- 12:30 2回目の懸垂ポイント
- 12:50 ルートミス
- 12:58 九階の滝
- 15:44 赤水沢に戻る
- 17:20 野生鳥獣センター駐車場
ログ・YAMAP
九階の滝 滝壺へ / kuzumisawaさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
装備
ハードシェル・沢靴(ラバー)
水2L・行動食
ハーネス・ガチャ類・ロープ(30m2本)←40m2本の方がよかったかも
撮影装備一式(魚眼レンズ+角型フィルター)
YOUTUBE
2021年7月3日 九階の滝
8:55 野生鳥獣センター駐車場
まず何より森吉山は遠いのだ…
最寄りのICから下道を1時間半以上。4時半に大崎市の道の駅を出発し、駐車場に着いたのが9時前。4時間半もかかってしまった。
仙台からだと福島の尾瀬、秋田の森吉、青森の下北のエリアが一番腰が重くなる山域だろうか。
下道が長いと精神的なしんどさが増してしまう…
森吉の空はずっとぐずついていて、車から降りると小雨が体を濡らす。
天気予報ではどんどん回復していく予報だったので、とりあえず入山することに。
天気がこれ以上悪くなるようなら、滝を遠望だけして下山してしまおう。
9:47 赤水沢分岐
小雨が木々の葉を叩く音色を聞きながら、入渓ポイントまでのハイキングを楽しむ。
道は歩きやすく、散策には持って来いの道だ。
しばらく歩くと赤水沢と桃洞沢の分岐が出てきた。
一度、沢を渡渉しまた赤水沢と並行する道を歩く。
この時にはもう雨は上がってくれていた。
赤水沢に入渓。
赤水沢と言えば「ナメ」と側壁の「スラブ」だが、入渓地点からもうその片鱗を覗かせている。
この時点でもうテンションが上がり、スゲエ・スゲエの大合唱。
高速道路のようなナメがひたすら続いている。
ところどころに人がすぽっと落ちてしまいそうな甌穴があるので注意は必要だが、テンションのままにバシャバシャと進んで往く。
さらに上流まで進むと側壁のスラブが目立ってきた。
漆黒の甌穴を持つ小滝を越えると右岸に枝沢が見えた。
ここから「様ノ沢」へ向かう。
10:54 赤水沢枝沢へ
似たような枝沢がたくさんあったが、地形図を見る限りここで合っているようだ。
枝沢はかなりぬめりが強く、ブッシュを掴みながら登ってゆく。
枝沢の傾斜がどんどん強くなっていく。
右岸のブッシュ帯にトラロープが残置されているので、ありがたく使わせていただく。
登り切ったところからトラバースし枝沢に戻る。
枝沢を詰め、鞍部手前の台地の二股分岐を左に進む。
さらに尾根まで沢を詰め、途中地形図を見ながら天狗ノ覗き方向へヤブ漕ぎ。
テープはたまに出てくるがあまり信用せず、地形図を見ながら進んだ方がいいかもしれない。
尾根に出るとかなりしっかりとした踏み跡に乗ることが出来た。
様ノ沢に降りる前に九階の滝を遠望できる「天狗ノ覗き」を探す。
と、疑問に思ったので帰宅後調べてみたところ、この尾根道は奥森吉から玉川温泉まで続く古道だったようだ。
昭和初期ごろまで使われていた古道がこの尾根道なら、当時の人達は尾根から九階の滝を眺めながら玉川温泉に向かっていたのだろう。
なんとも贅沢な温泉街道だ。
11:30 九階の滝・遠望(天狗ノ覗き?)
尾根道を南東に歩き続けると木々の合間から九階の滝の上部が見えてきた。
すり鉢状の大スラブ!
水量は物足りないが、それでも今まで見たことが無い滝の姿に興奮が隠せない。
あの擂鉢の底まで降りる。
帰ってから気づいたがどうやらあの遠望地は天狗ノ覗きではなかったようだ。
尾根のさらに先がそうらしい。
滝が見えたことに興奮し、滝壺に降りたい一心でさっさと戻ってしまった。
11:50 1回目の懸垂ポイント
尾根から捨て縄が垂らされているポイントから降りる。
なんとなくの踏み跡を辿りながら進むと枯れ沢にぶつかった。
枯れ沢を降りてゆくと、視界の先で沢がスパッと切れ落ちている。
落口の左岸に捨て縄が括り付けられている木があったので、30mロープをダブルで使用し懸垂下降。
少し足りなかったのでバンドに立ち、そこから斜面を滑るように降りた。
30mシングルか40mダブルを使う方が安全だろう。
降りた先には雪渓が!
火照った体を冷気が冷やしてくれるが、この先も雪渓が続くようなら心配だ。
結局雪渓はこの場所のみで下流には一切かかっていなかった。
さらに標高を下げてゆく。
視線の先には様ノ沢の大スラブが見えてきた。
九階の滝も近い。
12:30 2回目の懸垂ポイント
2回目の懸垂ポイントに出た。
1回目より斜度の緩い2段の段瀑になっている。
1段目は残置のロープがあったのでそれを使い、2段目の棚に降りる。
2段目の下降はロープ出して懸垂下降。
懸垂しなくても降りられそうだが、登り返しのことを考え安全に下る。
さらに先の沢との出会いに2段程度のナメ滝があったが、そこは沢の脇のブッシュ帯から降りられる。
12:50 ルートミス
沢との出会いで逆方向に降りてしまい、本来しなくてもいい様ノ沢を歩くことになった。
すぐに気づいて沢を戻ったが、様ノ沢の先に見えるスラブ帯が気になったのも正直なところだ。
先ほどの出合まで戻り、小滝を越えれば九階の滝が見えてくる。
12:58 九階の滝
形状:段瀑・スラブ滝
水系:米代川水系
九階の滝、その名前は落口から九段に落ちる姿から名づけられた。
滝前に立つとその姿は見ることは出来ず、最下段のすり鉢状のスラブ壁が見えるだけだ。
全国でもここまで大規模なスラブに滝がかかっている光景は珍しく、滝マニア垂涎の一本。
遠望からの姿、磨かれ続けた側壁、右岸のスラブ壁、そしてサラサラと流れ落ちる優美な流身。
どれをとっても超一級品の滝だ。
空を雲が覆っておりなかなか青空が見えなかったが、滝前で撮影をしているとサッと雲が消え青空が広がった。
梅雨の時期にこれほど条件のいい九階の滝を眺めることが出来るとは思っていなかった分、感動も倍増する。
下段だけでも70mくらいはあるだろうか。それだけでも巨瀑と言えるだろう。
最下段を下から眺めると北海道の社台の滝のような不気味な洞がぽっかりと開いている。
スラブに流れる優しい流身とまた違った姿だ。
淵は天然の鏡面になっており、流身が鏡写しに映っている。
この魅力も現地に来なければ気づくことが出来なかった魅力だろう。
滝前の淵は深く、場所によってはギリギリ足が着かないところもあった。
この淵を何往復もしながら滝壺に一眼レフや広角レンズを運んだ。
1時間ほどがっつり撮影させてもらった。
さすがに帰りの時間も考えるとそろそろ下山しなくてはと、14時に下山開始。
九階の滝に手を振り、再訪を誓う。
15:44 赤水沢に戻る
九階の滝から1時間45分かけて赤水沢に戻ってきた。
1回目の懸垂ポイントでの登り返しでロープを使わず登ってゆき、最終的にセミになって上から助けてもらったのは反省案件。
せっかくハンドアッセンダーまで持って行ったのだからちゃんと使えばよかった。
生きて戻れたことに感謝しながらの赤水沢五体投地をキメる。
復路は時間の限り赤水沢の甌穴プールで遊び大はしゃぎしながら下山。
九階の滝まで行かなくても赤水沢で遊ぶだけでも満足度は高いと思うので、気になる方は是非。
17:20 野生鳥獣センター駐車場
滝から3時間20分で下山完了。
朝はあんなにも曇天だったのに、しっかり青空を見せてくれている。
天気や行程、いろいろ不安もあったがそれも全部吹き飛んでしまった。
ずっと憧れだった九階の滝と対面出来、感無量です。
様々な場面で助けていただいた谷川さんには頭が上がりません。
またどこかの沢に遊びに行きましょう。
「百四丈」「二天」「九階」が終わった今、次の目標にすべき滝はあまり思いついておりません。
とりあえず前々からぼんやりと考えていた「ひぐらしの滝(白滝)」と「朱滝」は狙っていきたいと思います。
「シャチアシヒネリ滝」など再訪したい滝もまだたくさんあるので、まだまだ滝巡りライフは続くかと思いますので、どうかお付き合いください。