世界三大瀑布といえば「イグアスの滝」「ナイアガラの滝」「ヴィクトリアの滝」
日本三名瀑は「那智の滝」「華厳の滝」「袋田の滝」(諸説あり)
日本の滝百選(日本百名瀑)なんかもよく知られている名前です
では「世界百名瀑」とは??
今回はこの世界百名瀑について取り上げてみました!
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世界百名瀑とは?
話の前提として世界百名瀑の話に入る前にまずは日本百名瀑の話からさせて頂きますと
日本百名瀑は環境省と林野庁の公園のもと「緑の文明学会」「グリーンルネッサンス」「緑の地球防衛基金」の三団体によって1990年に選ばれました
日本全国から527滝がノミネートされ、8人の選考委員により127滝まで絞られ、最終的に100滝が選ばれました
選考では滝としての魅力はもちろん、文化的側面や地方がどの滝を観光資源としてプッシュしたいかなど色々な要素が基準にもなったそうです
なので正直なところ訪瀑しても「この滝がなぜ選ばれているのか…」と疑問に思うこともたまーにあったりします(私はまだ百滝全部見て回ったわけではないので大きなことは言えませんが…)
それでも選ばれている滝のほとんどは日本を代表する滝々です
滝巡りを始める方はまず百名瀑巡りから始めることも多いくらいです
日本百名瀑が制定された17年後に世界百名瀑は日本の写真家「白石義員」先生が中心に選定しました
白石先生は「地球再発見による人間性の回復」をテーマに「世界百名山」「仏教伝来」「中国大陸」「南極大陸」などをシリーズとして撮影していて、「世界百名瀑」はその10作目にあたります
一番の違いは、日本百名瀑は国の支援のもと団体によって自然保護や地域振興のため制定されましたが、世界百名瀑は白川先生の写真集作成のために有識者含め9人で絞り込みました
なので世界百名瀑には写真集が世に出るまで世界に名前が出てきていなかったニュージーランドの「無名瀑」なども選ばれています(今もまだ無名瀑なんでしょうか)
純粋に滝の魅力や水の美しさ、滝の規模などで選ばれていると言えるでしょう
しかし、白川先生の撮影がヘリコプターでの空撮が中心でしたので、ヘリでないといけない滝や空撮でないと全貌を見ることができない滝なども選ばれてしまっているため個人での「世界百名瀑」コンプリートの難易度はとんでもないことになっています…
余談ですがこの写真集を作るのに2億かかったそうです!!
日本からは7つの滝が選ばれています
選考委員長が日本人ということもありますが、狭い島国から7本の滝が選ばれているのはさすが「滝王国日本」ですね
ちなみに一番多い国は同数で「カナダ」「アイスランド」「ノルウェー」の9本と高緯度の国に集中しています
日本で選ばれたのは「羽衣の滝」「銀河の滝」「梅花皮の滝」「華厳の滝」「称名滝」「那智の滝」「中の滝」
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2019年GWの「中の滝」への訪瀑で日本の世界百名瀑を訪瀑できたので今回この記事を書くことにしました
世界に誇る日本の名瀑をどうぞ!
因みに私は意地で全部揃えましたが、その月はお昼抜きの日が続きました…
落差270mの大雪山の天人峡に流れる名瀑・羽衣の滝
滝見台から少しの遡行で滝壺まで行くことが出来ます
複雑に流れを変えながら落ちる流身を滝壺から眺めることは叶いませんが、何度も何度も岩盤に水が叩きつけられ轟音が滝壺に響きます
大雪山から豊富な水量が流れ込むため、羽衣の滝は厳しい北海道の冬でも決して凍ることなく流れ続けます
『世界百名瀑』では紅葉時期の空撮と厳冬期の空撮が選ばれています
その『世界百名瀑』に載っている空撮と近い滝の姿を見ることが出来るのが対岸の滝見台になります
羽衣の滝が大町桂月に名付けられる前には「夫婦滝」と呼ばれていたそうです
二つの沢が途中で一つの滝になるところから名づけられたのでしょう(きっと)(たぶん)
観光地としても有名になった天人峡の「羽衣の滝」でした
大雪山を挟み、羽衣の滝の反対側の層雲峡に流れるのが流星・銀河の滝
『世界百名瀑』としては銀河の滝が選ばれていますが、これは隣に流れる流星の滝を含めての登録となっています
(イグアスの滝が大小様々な滝の総称として登録されているのと同じだそうです)
滝に正対して左手に流れる天の川のような滝が「銀河の滝」
右手に流れる流れ星のような滝が「流星の滝」
『日本の滝百選』には「流星・銀河の滝」として登録されています
まさに天の川のような水墨画の世界の濃淡を表したかのような精緻な流れを持つ『銀河の滝』
その滝が落差120mを持っていること自体が奇跡であり、また層雲峡の地質的な稀少さも選考の理由になっています
大町桂月に名付けられる前は「流星の滝」が雄滝、「銀河の滝」が雌滝
「流星・銀河の滝」を夫婦滝と呼んでいたそうです
「仰ぎ見る 銀河の滝は 岩飛沫 凍てるがままに 細りてありき」 新島善直
北海道二つの世界百名瀑は大雪山の東と西に流れる二つの夫婦滝でした
東北地方からの唯一の選考入りが「梅花皮大滝」
東北地方には多くの眉目秀麗な名瀑が流れていますが、「梅花皮大滝」はその規模・絶景度・秘境度、どれも群を抜いています
『世界百名瀑』の中では空撮の7段すべての写真が使われていますが、ヘリを使わずに見るとするならば梶川尾根の滝見場からか倉手山の山頂からの遠望が可能ですが、滝の一部しかみることすかできません
滝を間近で見るには登山道までの道が解放される4月ごろから雪渓が残っている5月中までの短い期間を狙うしかありません
更に前衛滝が雪渓で埋まっているのか、棚まで雪渓が繋がっているのかなど様々な運要素も生じてしまいます
その幾多の試練を乗り越えてお会いすることができる「梅花皮大滝」はあまりにも雄大でひたすらに力強く水を落とし続けていました
陳腐な言葉ですが大自然の前では人の存在なんて塵みたいなものだと強く感じました
この滝が選ばれているというのは、やはり『世界百名瀑』が空撮中心に撮られ、選ばれていることが如実に表れているのでは?と思います
残雪期でも流れの巣窟を横切らなくてはならず、無雪期では本格的な沢登りが必要とされます
ドローンがある今ならまだ理解もできますが、全貌を見るにはヘリしかなかった時代にこの滝が選出されるとは
「日本の滝百選」と「世界百名瀑」の違いはココですね…
雪渓も滝に近づけば近づくほど脆く、リスクは高まります
私たちが訪れた時は雪渓が4段目?の棚まで繋がっていたので滝に近づくこともできましたが、本来はこの雪渓の上からの撮影が基本になります
「梅花皮大滝」への訪瀑の際は十分に注意して、無理せず帰ってきていただければと思います
ツアーも毎年組まれているようなので、そちらを使うのも手かと
日本三名瀑の一つ「華厳の滝」も『世界百名瀑』に選ばれています
奥日光の中禅寺湖から流れる湖水がそのまま直瀑となったのが「華厳の滝」、伏流水となり中段から流れ出てくるのが「十二滝」
直瀑と潜流瀑の複合滝が『華厳の滝』と広く知られています
上部51mが安山岩、その下が集塊岩と安山岩、基部が集塊岩
その境目から伏流水「十二滝」が流れ出ています
上から眺めると地質の違いによる浸食の進行のスピードの違いが分かります
『世界百名瀑』では紅葉時期の空撮が使われていましたが、記事内の写真は滝見台からの写真になります
滝見台以外は華厳渓谷が崩落しやすいため立ち入りが原則禁止となっています
どんな滝も一秒一秒、この一瞬にも削られ後退し形を変えています
華厳の滝ははるか昔、800mほど下流を流れていたらしいです
「滝は何度撮っても、同じ滝ではない」
日本の最大の滝も『世界百名瀑』に選ばれています!
立山・弥陀ヶ原を集水域とし、毎秒2トンの水を350mもの高所から叩き落している名瀑 of 名瀑
70m・58m・96m・126mの四段の段瀑、滝壺の深さも6mあり、すべてが超弩級の称名滝
渓谷に響きわたる轟音は「日本の音風景百選」にも選ばれています
また紅葉時の美しさは世界でも類を見ないほどで、『世界百名瀑』にも紅葉時の空撮が掲載されています
称名滝は古くから信仰の対象ともなっており、平安時代には「勝妙滝」の名がつけられていたとのこと
上流の称名廊下は「日本最後の地理的空白部」とも言われていたこともあり、2013年の大西氏の計3回に分けての遡行成功まで「未踏の地」として君臨し続けました
大西氏は2016年には単独での完全遡行も達成しています
350mの沢登りの後に、両岸200m、2kmのゴルジュを遡行するなんて…
称名滝は日本最後のダンジョンの門番として何百年もの間、沢ヤの前に立ちふさがり続けてきたのです
左岸には落差500mの「ハンノキ滝」が流れていますが、水量が乏しく、条件によっては完全に枯れてしまうこともあるので「日本最大の滝」として認められていません
水量が多い時の滝壺は圧巻の一言で、水煙が天まで昇っていくほどの勢いです
さらに水量の多い時は「ソーメン滝」も現れることもあるそうです
称名滝も信仰の対象でしたが、この滝は滝自体が御神体
日本三名瀑の「那智の滝」も『世界百名瀑』入りです
落差133mと一段の滝の中では日本最大でありながらも、神が作り出した精緻な流れ
別名「三筋の滝」とも呼ばれ、落口の三筋の流れが特徴的な日本でも一等意味を持った滝の一つです
滝の歴史は神話時代の神武天皇までさかのぼり
熊野三山の那智大社と共に全国区でも有名な滝ですが、滝自体も飛瀧神社のご神体でもあり、7月には「扇祭」とも呼ばれる日本を代表する火祭りも行われます
遥か昔から日本と、日本の文化と共に流れ続ける那智の滝は日本の滝の中でも特別な意味を持っていて
今でも多くの人たちがこの滝を目指して全国から集まってきています
那智原始林には多くの滝があり、その中の四十八滝を「那智四十八滝」と称していました
一度「那智四十八滝」の情報は途切れてしまいましたが、1991年に古文書等の情報から再発見に至りました
写真の滝は「那智の滝」として有名ですが、「那智の滝」というと「那智四十八滝」を示す場合もあるので「一の滝」と呼称されています
また「二の滝」「三の滝」が上流の那智原始林にで流れていますが、特別な許可とガイドの同行が無ければ見ることは叶いません
この写真は大台ヶ原の滝見尾根(現在は廃道)からの一枚
右手の滝が「中の滝」、左手の滝が「西の滝」
この二つの滝を纏めて『世界百名瀑・中の滝』として登録されています
悲しい話だ…
深い渓谷の両対岸での対面だったため、空撮のようにある程度の全貌を見ることが出来ましたが、それでも下段までは把握できませんでした
『世界百名瀑』の中でも白川先生も「西の滝の上部は深い溝になって空撮でも撮ることが出来なかった」と語っていました
落差だけでは称名滝より規模は小さく、羽衣の滝と同じぐらいのはずですが、私と中の滝、お互いV字渓谷の両対岸にいることから高度感がものすごかったです
まさに高層ビルから滝が落ちてくるような
中の滝が段瀑とは言うものの、ほとんど直瀑のような形になっていることからこの高度感が生まれているのだと思います
『世界百名瀑』の中で「梅花皮大滝」と並び立つ難瀑
ただ、その甲斐あってか中の滝と相対した際には「滝巡り」を続けていてよかったと思いました
こういう滝と出会えるからこそ「滝巡り」はやめられないんですよね~
「西の滝」の滝壺まで降りましたが、こちらの滝もお気に入りです
見ることが出来ない上段を抜いても100mはあるかという豪瀑
人を入れられなかったので、大きさがピンとこないかもしれませんが周りの木を見ていただければ、その規模がわかるのではないでしょうか
「滝は永久と瞬間の芸術」
※現在「滝見尾根ルート」は西大台(調整利用区)には含まれていませんが、一般登山道から外れた廃道となっております
ピンクテープはあるものの所々、危険な場所もございますので単独での訪瀑はおススメできません