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荒川東俣沢 曲滝・綾滝・大滝
今年1番の思い出はなんだと聞かれたら、この大朝日岳荒川の沢登りを挙げるかもしれない。
荒川は何といっても、その透明度が特徴的だ。
そこに水が存在するかもわからないほどの透明度。
そんな透明度の高い沢は今までの沢登り人生で初めてだった。
白く光る花崗岩の岩盤も美しく、その花崗岩を穿ち、作り上げられた3本の名瀑も素晴らしい。
何から何まで最高の沢登りであり、滝巡りであった。
不満点は夕方からの蚊の襲来とクソ長い下山道…
お盆前に1泊の沢登りに行こうとポムチムから誘いを受け、選ばれたのがこの「荒川」だった。
荒川も支流が多く、西俣・中俣・東俣があるが今回は大朝日小屋に詰め上がる東俣を選んだ。
2年ぶりの泊まり沢であり、人生初めての5級沢。
雪渓は残っていないはずなので、ある程度は楽もできそうだが、それでも不安なものは不安である。
ただ以前から荒川の曲滝・綾滝・大滝を訪瀑してみたかった気持ちもある。
えいやと心を決め、大朝日岳の荒川に飛び込んだ。
行程
ログ・YMAP
荒川東俣沢 / kuzumisawaさんの大朝日岳・平岩山(山形県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
装備
ハードシェル・沢靴(ラバー)
水1.5L・行動食
ハーネス・ガチャ類・ロープ(30m2本 )
撮影装備一式
一泊装備
YOUTUBE
いつもより長い動画になったが、荒川の透明度は写真より、ぜひとも動画で見てほしい。
2024年8月4日 荒川東俣沢 曲滝・綾滝・大滝 1日目
06:22 針生平
針生平と書いて「はんなりだいら」。
以前、金目川を遡行し祝瓶山に詰めあげた際に下山したのが針生平だ。
今日はここから荒川に向かう。
荒川まで向かう道に3本の吊り橋がかけられている。
1本目、2本目は工事現場で使用する足場が使われているが、3本目は足幅しかない一本橋を進んでいく。
高所恐怖症の人にはつらい登山道だ。
インパクトがあるのは3本目だが、一番怖かったのは実は2本目。
足場が斜めに傾いているので、ひっくり返りそうになる…。
07:45 荒川入渓
1時間と少し歩くとようやく荒川の入渓点にたどり着いた。
ここから荒川の遡行がスタートする。
荒川に近づいていくと、水の透明度が高すぎてそこにあるはずなのにはっきりと認識できない。
こんなに透明度の高い水が流れている沢は初めてだ。
日本でもトップクラスの透明度だろう。
2日間通して荒川の透明度の高さには驚かされ続けました!
襲い掛かるアブを払いつつ、そのうちに諦めつつ荒川を歩いてゆく。
10:52 曲滝
撮影:ポムチム
落差:30m
形状:段瀑
水系:荒川(羽越)水系
何本かの小滝と瀞を越えると巨瀑が見えてきた。荒川の3本名瀑の内の1本「曲滝」だ。
名前の通り2段に屈曲している段瀑。岩の圧迫感と滝から放たれる飛沫が凄まじい。
岩が覆いかぶさるように発達しているので、滝の轟音が滝前に響いている。
ポムチムが写真撮影を張り切ってやってくれて、素晴らしい写真が撮れた。
最近は動画撮影ばかりで、写真撮影は同行者に任せることが多くなりました
曲滝は右岸から草付きの泥斜面を登っていく。
チェンスパはつけたほうがよかったかもしれない。
曲滝の上流も素晴らしい景色が続く。
11:40 綾滝
撮影:ポムチム
落差:8m
形状:段瀑
水系:荒川(羽越)水系
曲滝を越えると次に出てくるのが「綾滝」だ。
今日の荒川は水量が多く、綾滝の通過が核心の一つだった。
やはり水量は多く、普段より流身が太いように見える。
今日は名前のような優雅さはないが、それでも2段の美しい段瀑だ。
この滝の通過では、上段の流身の裏に潜って進まないといけない。
水量が多く、水流に飲まれてしまったら滝壺に叩き落されるだろう。
特攻隊長のポムチムが試しに足を差し込んでみる。
「おや、案外足場がある」とするすると流身の裏に消えていった。
なかなかにスリリングだったが見た目ほどの危険度はなかった。
綾滝はアトラクションとしても素晴らしい名瀑だった。
綾滝の上流のゴルジュはかなり厳しい地形をしている。
水流沿いの直登はかなり厳しいように見えるので、右岸から巻くことにした。
ロープを出し側壁を登っていく。支点もかなりプアーで、上部の泥付きスラブは結構嫌らしい。
なんとか灌木でピッチを切り、ポムチムを迎える。
13:14 西沢出合
支流の西沢から轟々と流れ落ちている。
どこか異様な雰囲気を持つ西俣沢を過ぎると、崩れた雪渓が沢に詰まっていた。
雪渓が多い年だと荒川の遡行はかなり難儀になるが、今年はこの西俣沢出合でしか見ることはなかった。
13:28 荒川大滝
撮影:ポムチム
落差:30m
形状:段瀑
水系:荒川(羽越)水系
荒川本流3本滝も最後になってしまった。
最後は「大滝」、ゴルジュの先に見える段瀑だ。
側壁は威圧感があり、人を近づかせないような「大滝」。
しかし流身に光が差し込み、手前の釜はエメラルドグリーンに輝いている。
神々しくもある「大滝」、荒川の中では1番好きな滝だった。
大滝は左岸から巻く。
草付きの斜面をよじ登り灌木帯に入ると、あとはトラバース。
ルンゼから懸垂下降でピッタリ落口に出ることができる。
ここの巻きにはかなり時間をかけさせられました…
いやー、暑かった…
16:00 テン場
大滝を越えると沢も落ち着きを見せてくる。
中俣出合で1泊する記録も多いが、翌日昼過ぎから少し天気が崩れる予報だったので、明日のことも考え東俣に入り少し進むことに。
2人くらいなら寝れそうな河原を見つけたのでここで1泊。
焚木も十分に集まり、空には一面の星空。
2年ぶりの沢泊は素晴らしい思い出になった。
蚊さえいなければ、完璧な沢泊だったのに
2024年8月5日 荒川東俣沢 曲滝・綾滝・大滝 2日目
04:00 起床
さすがの寒さで起床。
テン場を片し、日が昇ってくるのを待つ。
今日は天気が崩れる前に登山道まで出ておきたい。
沢もようやくうっすら明るくなってきた。
大滝が多く出てくるが特に通過に支障はない。
3段20m滝が現れた。
写真は3段目の滝だが、1段目の滝の登攀が少し悪かった。
左岸のスラブから流身を飛び越えるように右岸に移る。
2段目、3段目は左の岩壁から。
07:00 50m無名滝
東俣沢の左沢に入ると、いきなり50m級の大滝が出迎えてくれる。
名前がないのが不思議なくらいの巨瀑だ。
右岸の灌木帯から容易に巻ける。
左沢に入ってからの情報を入れてこなかったので、こんな滝があるなんてかなり驚きました。
ポムチムと2人で大興奮!
東俣沢左沢に入っても10m級の滝はポコポコ出てくるが、どの滝も快適に登攀できる。
荒川の本流筋だからか水量も多く、暑いこんな日にはピッタリの沢だ。
稜線が近づいてくると滝も少なくなってくる。両岸の険しさなくなり、沢も細くなってきた。
源頭を詰めあがると大朝日避難小屋にたどり着く。
1泊2日の沢登りだったけど、日数以上の達成感がありました
11:00 大朝日岳山頂
小屋で休憩を取った後は、針生平まで長い長い下山が待っている。
大朝日岳の山頂はトンボが視界を埋め尽くすほど乱れ舞っていた。
山頂から平岩岳方面へ下っていく。
18:00 下山
脱渓してから針生平までが想像以上に長く、そして険しく、登山口に着くころにはかなり疲弊してしまった。
天気も昼から小雨が降る予定だったのだが、まったくそんな気配などさせず、太陽が頭の上からこれでもかというくらい強い日差しを降り注いでいた。
意識は朦朧とし、熱中症も間近というところではあったが、何とか沢まで辿り着き体をクールダウンさせる。
あまりにも長い稜線だったが、人の気配はなく、山も雄大で、そして何より西側からの大朝日の眺めが素晴らしい稜線だった。
6時間以上かけ無事下山。
車に着いたときは少し日も傾き始めていた。
1泊2日での沢登りだったが、この距離なら2泊3日で余裕をもって計画を組んでもいいかもしれない。
大朝日岳、荒川東俣沢。
水の美しさ、透明度は日本トップクラスの沢だと言っていいだろう。
滝も多く、曲滝、綾滝、大滝はもちろん、それ以外の滝も滝好きとしてもおすすめできる。
夏の朝日は虫が多いことと、下山が長いことに目をつぶれば最高の沢登りだった。
次は荒川中俣に挑戦したいとポムチムと話してもいたが、
またあの6時間の下山に尻込みしてしまっています…