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日暮しの滝(白滝)
2023年、一番記憶に残った訪瀑はこの白滝(日暮しの滝)だろう。
青森に住んでいた頃からいつかは訪れてみたいと強く思っていた滝ではあったが、滝までのアプローチや白神山地への入山届など、いくつかのハードルがあり諦めてしまっていた。
あれからもう10年。やっと白滝にチャレンジできる機会がやってきた。
世界遺産・白神山地の核心地区に流れる白滝。別名、日暮しの滝は追良瀬川の源流部に流れている落差50mの秘瀑である。
ルートとしては西津軽に流れる津梅川から入渓し、源頭まで遡行、コルを乗越して追良瀬川に下る一泊二日の行程となった。
追良瀬川を遡行するルートのほうが沢登りで考えたら満足度が高いだろうが、今回は日暮しの滝を見ることに目標を絞ったためこのルートとなった。
同行者は大学時代の後輩であるK。現在、白神山地で働いている心強い道連れだ。
白神山地の核心地区への入山には届け出が必要だ。
詳しいことはこちらから確認してほしい。
URL:https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/policy/business/sigoto/attach/pdf/shirakamitoriatukai-6.pdf
自分で今回申請をしてみて、想像よりは簡単だったことに驚いた。
いつまでこのエリアへの入山が許可されるかもわからないという不安もあり、今回日暮しの滝に挑戦することにしたが、こんなに簡単なら早く挑戦するべきだったとも思った。
白滝へは一泊二日の行程だったが、早朝からスタートし日帰りでのチャレンジでもよかったかもしれない。
津梅川からのルートは沢登りとしての楽しさはほとんどなく、冗長なゴーロ歩きが続く。
次回また訪瀑する機会があるのなら荷物を最低限にして、日照時間の長い夏に早朝からスタートしたい。
もしくはもっと長い時間を取り、追良瀬川を遡行する沢旅にするか。
白滝は美しく、苦労した甲斐があった。
白く光る絹のような流身を翻しながら流れる姿を忘れることはできない。
白神山地の核心地区、原始の姿を残す世界最大規模のブナ林。
その中にひっそりと流れている白滝。
滝好きとして忘れられない訪瀑となった。
行程
ログ・YAMAP
日暮しの滝(白滝) / kuzumisawaさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
YOUTUBE
装備
ハードシェル・沢靴(ラバー)
水1.5L・行動食
ハーネス・ガチャ類(スリング)
撮影装備一式
一泊装備(テント・寝袋)
2023年10月14日 日暮しの滝(白滝)
05:45 藤里町~道の駅「はちもり」
金曜日、仕事を終え仙台から秋田北部藤里町まで移動する。この日は大学時代の後輩Kの家で一泊宿を借りることになっていた。
時刻も12時を回り、さすがに目蓋も重くなってきたころようやく藤里町に到着。
街灯は一つもなく、あたりは闇の中。よく熊が出ると聞いていたので恐る恐る車を降り、急いで家の中に転がりこんだ。
起床は4時半。起きてきたKと7年ぶりくらいの邂逅をし、出発の準備を整える。
町を霧が包む中、車2台白神山地へ走ってゆく。
07:45 林道終点
林道終点の手前で倒木があり通行止め。ここからは車を降りて進んでゆく。
白滝への旅がスタートした。
10分ほど歩くと本来の林道終了地点にたどり着く。
入渓までの林道はそこそこ荒れており、何度か嫌なトラバースがあったので注意が必要だ。
08:30 津梅川入渓
堰堤を越えたところから津梅川へ入渓。何の変哲もない河原を歩いてゆく。
大又沢と小又沢の分岐は右俣の小又沢に入る。
獣の姿は未だ見えない。
09:10 カンカケ沢
次の分岐は左俣のカンカケ沢に入る。
カンカケ沢は今まで河原歩きよりは幾分沢登りの雰囲気が出てきた。
想像以上に荒れており、両岸が崩れていたり倒木が行く手を塞いでいたりと、進むスピードが一気に下がった。
滝も出てきたが、落差3~5mの小滝程度。
巻道があったりトラロープがあるので楽に巻くことができる。
ここまでは人の気配が残っていた。
11:03 ゴーロ帯
カンカケ沢から枯沢に入り、Co885mの南東のコンタ尾根を目指してゆく。
この枯沢への入り方が厄介でCo350m地点で一度枯沢に入るが、そのまま登ってゆくと北西のコルに出てしまう。
枯沢に入ったらすぐに右に分岐があるのでそこに入らなければいけない。
そのまま詰めてゆけば正しいコルに出られるはずだ。
12:30 尾根
720m地点まではゴーロが続いており、ハイステップの階段上りがひたすら続いてゆく。
残りはヤブ漕ぎ。そこまで濃くはないが傾斜があり、足が不安定なので少し時間がかかったが昼過ぎにはコルにたどり着いた。
ここからようやく白神山地の核心地区に入る。
視界の先には山頂が顔をのぞかせているが、あれは白神岳だろうか。
13:50 黒滝
コルを下り、追良瀬川の源流域に入った。ヤブはすぐに枯沢に変わり、水も少しずつ増えていく。
下っていると沢が切れ落ちている。おそらくここが黒滝の落口だろう。
落差20m、今回は軽量化のためロープを持ってきていない。
懸垂下降は使えないので落口の立木にスリングを連結し、バンドをへつるように巻き下った。
復路で気づいたがここは右岸の斜面を登りさえすればリスクなく大きく巻き降りれたようだ。
14:43 白滝沢
黒滝からは難所もなく、あっという間に白滝沢に出ることができた。
本日のテン場はここだが、滝は白滝沢の先だ。
荷物を置いて白滝に向かう。
15:00 白滝(日暮しの滝)
落差:50m
形状:分岐瀑
水系:追良瀬川水系
白滝沢出会いから歩いて5分、白滝(日暮しの滝)とようやく出会うことができた。
世界遺産「白神山地核心地区」に流れる落差50mの段瀑は、美しい流身を2段に分かちながら優美に流れている。
滝壺から眺めても素晴らしいが、可能なら対岸の斜面を登ってほしい。
滝の全貌を見ることで、白滝の雄大さが理解できるだろう。
紅葉の時期にはまだ早かったか色づいているのは落口だけであった。
ちなみにこの季節では流身に光が当たるのは13~14時くらいだろうか。
この時間帯では日は谷にまで差し込んでくれなかった。
傾斜は緩いので1段目の棚までは簡単に行ける。
落口まではおそらく楽に登れるだろう。
日暮れまで時を忘れて眺めてしまうことから日暮しの滝と呼ばれる白滝。
もう日は沈んでしまった。テン場に戻ろう。
さっとテントを張り、少し休憩。時間はまだ早いが夕飯にしてしまおう。
テントに臭いがついてしまうもの危険なので、河原に移動し夕飯の準備をする。
白神山地はもちろん焚火は禁止されているのでガスで湯を沸かしアルファ米とレトルトの夏野菜を食べた。
空腹だったからだろうか、想像以上に味がしっかりしておりあっという間になくなってしまった。
ウイスキーと芋焼酎を片手に白神山地の夜が更けてゆく。
2023年10月15日 日暮しの滝(白滝)
05:50 起床
もう少し冷え込むかと思っていたが、そこまで寒さで苦しまない夜だった。
3番シュラフにカバーでもよかったかもしれない。
獣の気配は未だない。町に降りてくる熊のニュースは数えきれないが、核心地区にはあまりいないのだろうか。
06:58 黒滝
二日目は来た道を引き返し帰るだけ。
黒滝は右岸の枯沢から落口に大きく巻けた。
スリングを回収し、無事コルまで。
13:26 下山
コルまで出てしまえばあとは簡単な沢歩き。
熊にだけ注意し林道終点まで戻ってきた。
一泊二日の白滝訪瀑が終了した。
2023年を振り返るとこの白滝の訪瀑が一番印象に残っている。
いつかはいつかはと思い続けようやく挑戦できると踏ん切りがついたのが今年だった。
滝は素晴らしく文句無しの美しさだったが、次もし訪れることがあれば追良瀬川から遡行を続け滝へと至りたい。
白神山地の核心地区の扱いがどう変わってゆくかはわからないが、願わくば白滝はその美しさを永遠に残していてほしい。